堕天使は聖母に・・マリアンヌ・フェイスフル「やわらかい手」
私は女性なので、同性より男性の方が好きに決まってるけど(笑)
映画の中で忘れられない女性も数多い。
例えば「男と女」のアヌーク・エーメ、「ジュリア」のバネッサ・レッドグレーブとジェーン・フォンダ、「俺たちに明日はない」のフェイ・ダナウェイ、「テルマ&ルイーズ」のスーザン・サランドン、「ドライビング・ミス・ディジー」のジェシカ・タング、「恋のゆくえ」のミシェル・ファイファーetc.
そして10代の頃に観た、「あの胸にもういちど」のマリアンヌ・フェイスフルの強烈な印象も、ずっと忘れることが出来なかった。
「伝説のミューズ」とよく言われるけれど、
確かに神々しいような美貌と肢体、無垢な愛らしさを備えた美しさには、男性ならずとも惹きつけられてしまう。
「あの胸にもういちど」撮影当時(1968年)はミック・ジャガーとの熱愛やドラッグでのスキャンダルの渦中だったそうだが、そんなことは全く感じさせない。
黒皮のバイク・スーツに裸身を包み、ハーレー・ダビットソンを駆って数百キロ離れた恋人(アラン・ドロン、これまた憎らしいほどクールな魅力)のもとへ急ぐ、恋する女の美しさ、かっこ良さといったらない。(これが「ルパン三世」峰不二子のモデルになったのは有名な話)
「イージー・ライダー」に先んじること数年、アメリカン・ヌーベルバーグを先取りしたような衝撃的なラストも忘れ難い。
しかしそれっきり、マリアンヌの姿はスクリーンからもヒットチャートからも消えてしまった。
ドラッグにアルコール中毒、ミックとの破局のあとは心身ともにボロボロになり、自殺未遂、ホームレス寸前までいったのだとか。
「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」の透き通った声はクスリと煙草のせいで潰れてドスのきいたハスキーヴォイスに。
その後立ち直り、本国イギリスではだいぶ前から歌手としても俳優としても復活しつつあったらしいが、
日本ではずっと忘れられた存在だったと思う。
そして40年近く経ち、近年「マリー・アントワネット」のテレジア王妃役で、あらら久しぶり!に再会したと思ったら、
なんとヒロインとして映画に返り咲いたのが、2007年に公開された「やわらかい手」。
40年後に二度目のヒロイン!なんて今までに例があっただろうか!?
マリアンヌ・フェイスフル60歳にしての素晴らしいカムバック!
まさに奇跡的♪
その「やわらかい手」
ともかく私にとっては「あの胸にもういちど」以来2度目に観る映画なので、
その凄まじいばかりの年月の経過を見せつけられるようで正直ショッキンクでもあった。
あの天使のように美しかったマリアンヌが一気にデブのおばあさんに・・・って40年も経てば当たり前なんだけど。
ところがこの映画、すごく良かったのだ。
ロンドン郊外にひっそりと暮らす未亡人のマギー。
彼女の苦悩は最愛の孫のこと。
幼い孫は難病に侵されており、息子夫婦も彼女も治療費のために家まで売り払っているが病状は悪化するばかり。
一縷の望みをかけ、オーストラリアに最新の治療を受けに行くことを病院から勧められたものの、借金も断られ、渡航費用を捻出することは不可能だった。
迫るタイムリミットにいてもたってもいられないマギーは職を探すが職安では門前払いされてしまう。
そんな時、ふと見かけた従業員募集の張り紙。
世間知らずのマギーはそこが風俗店であることも知らなかった。
オーナーに説明された仕事の内容は、手を使って男性を昇天させること。
仰天したマギーは逃げ出すが、孫のため身を捨てる覚悟でその仕事につく決心をする。
はじめはおっかなびっくりだったマギーだが、意外なことにそのテクニックは評判を呼び、あっというまに店のナンバーワンに・・。
実際仰天する内容で一応R15指定になっているのだけど、決してキワモノ映画ではない。
直接的、露骨な描写は一切出てこないので安心して観ていられる。
それでいて、「あの胸にもういちど」を観ている私としては、エロスのミューズとしてのマリアンヌにどこかリンクして感じられるのが可笑しくもせつなかった。
最初はその歳のとり方に愕然としたものの、観ているうちに往年の可愛らしさが顔をのぞかせ、ああやっぱりマリアンヌだ・・とか。
渡された大金を怪しんで母親の仕事を知り、怒り嘆く息子、反対にマギーの捨て身の行動に感動し、心を開く嫁、
親切ごかしで詮索好きな友人たちとのエピソード、評判を聞いての他店の引き抜き工作など、マギーを取り巻く人物像が興味深く描かれて飽きさせない。
店のオーナー、ミキとの心の交流は、その行方が気になるところだけど・・。
原題は「イリーナ・パーム」
マギーのセックスショップでのステージネームだ。
一般的に「堕ちる」というイメージの強い風俗の仕事をしながら、
彼女は決して汚れることはなかった。
堕ちるどころかそれをバネにするごとく、平凡でどちらかといえばドンくさいおばさんだったマギーが、しっかりした意志を持って自分の足で歩みだす姿がなんとも健気でいとおしく、女性の底力とおおらかさを感じさせた。
ともあれ「あの胸に・・」の彼女がミューズであり、その後のスキャンダルや荒れた生活で言われたように「地に堕ちた天使」だったとすれば、
この映画の彼女はそう・・・まさに「聖母」であり、「観音」であると言えよう。
地獄を見たからこそ、到達できた境地であり、演技であるのかな、と思ってしまう。
またアラカン(アラウンド・還暦ね♪)の彼女の復活、成功は、同じ世代の人々を大いに勇気づけたのではないのかな♪
マリアンヌ・フェイスフル健在!
いやほんとにいい映画です、お勧め ![]()
「あの胸にもういちど」と併せて見て、しみじみと感慨にふけるのもいいかも・・。
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こんにちは
「やわらかい手」私も観ました。
雪うさぎさんのコメント読みながら「そう!そう!」と相槌うってました。
職場を自分流にレイアウトしちゃうあのシーン好きです。
マリアンヌ・フェイスフルのスキャンダラスなうわさはネットで見たことがありましたが「あの胸にもういちど」を観てないのでレンタルします。あるかしら?
「やわらかい」つながりで邦画の「やわらかい生活」寺島しのぶ、豊川悦司つながりで「愛の流刑地」観ました。
投稿: yattiy | 2009年2月13日 (金) 14:11
☆yattiyさん、こんばんは♪
はいはい、あのシーンはいかにも主婦らしくて可愛かったですね。
オーナーが「東京で見て作った」と言ったのにはビックリ。
それにしても男性ってあんなに並んでまで・・と可笑しかったです。
「あの胸にもういちど」観ていらっしゃらなかったですか。
去年新しい盤も出ているのでレンタルもあると思いますけど・・。
あの時代の空気もなつかしいし、
ともかく40年前のマリアンヌの美しさをぜひ見ていただきたいです♪
「やわらかい生活」はここにも書いたけど、面白かったですね。
)
寺島しのぶってすごい存在感!
「愛の流刑地」、あれは苦手なジャンルで観てないんですよ。
渡辺淳一の小説って何故か拒否反応・・(偏見?
投稿: 雪うさぎ | 2009年2月14日 (土) 02:08